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洪鋒雷・赤松大輔研究室@横浜国立大学 理工学部・大学院工学研究院では、超精密分光・量子計測を専門とし、光コム、光周波数コム、光時計、原子・分子、原子時計、量子標準の研究・教育を行う

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『パリティ』の編集委員として

右から、大槻義彦編集長、橋本幸士編集委員、花輪知幸編集委員、小野嘉之編集委員長、洪鋒雷編集委員(筆者)、深尾良夫編集委員(2019年2月15日、丸善出版にて))

物理を楽しむように


洪 鋒雷 編集委員(2012年~2019年)


 物理科学雑誌『パリティ』は、2019年5月号をもって休刊することとなりました。これまで編集委員会として行った仕事を振り返ってみたいと思います。

 編集委員に就任したのは2012年の4月で、当時私はまだつくばの産業技術総合研究所でレーザー物理に関する研究をやっていました。TXがすでに通っていたので毎月1回の神保町での編集会議に参加可能であることと、なにより楽しそうな仕事だから引き受けることにしました。

 編集委員会のメンバーは、編集長大槻義彦先生、編集委員長小野嘉之、編集委員の関井隆先生、橋本幸士先生、安田賢二先生及び私でした。途中で、安田先生と関井先生が交代となって、深尾良夫先生と花輪知幸先生が加わりました。編集委員として私は、自分の専門分野である原子・分子物理及び量子エレクトロニクスを担当しました。毎月ハイレベルの原稿を閲読する仕事は実に刺激的で、とても勉強になりました。これまでの研究はどうしても専門分野のある狭い領域にしか目を向けることができなかったのですが、パリティの編集委員になってからはより広い視野で物理を楽しむようになりました。

 編集委員の仕事は原稿の閲読だけではなく、翻訳やオリジナルの原稿を大学の先生や研究所の研究者に依頼することも重要な仕事となります。なるべくいろいろな方に原稿を依頼するように心がけました。しかし、「連載コラム:私はこうして物理を選んでしまった」に関しては他の編集委員からの提案が少なかったこともあって、多少量子エレクトロニクス分野に偏りました。また、「連載コラム:物理っておもしろい?」も関係者への依頼が多かったと記憶しています。

 パリティの特集に関しては、2つ取り組みました。1つ目は、2014年7月号の「X線自由電子レーザー(XFEL)」で、理研の石川哲也先生の協力を得て共同で提案しました。2つ目は2018年10月号の「光格子時計の新展開」になりますが、こちらは自分の専門分野に関するもので、東大の香取秀俊先生をはじめ、関係者の皆さんに執筆依頼をさせていただきました。

2018年10月号表紙の写真

 「物理科学,この1年」に関してはなるべくその年に注目する仕事をピックアップするようにしました。ただ、特集の内容が決まるのが夏から秋にかけてなので、どうしてもその前の年の研究も含まれるようになります。以下にその一部を示します。
●ナノ光ファイバー量子フォトニクス 白田耕藏(2013年)
●注目されるハイブリッド量子系 仙場浩一(2013年)

●光格子時計の新しい展開 高本将男(2014年)
●断熱過程を用いた冷却イオンの量子状態制御 占部伸二(2014年)

●3回回転対称性と円偏光第2高調波発生 五神 真(2015年)
●高出力フォトニック結晶レーザー 野田 進(2015年)

●光格子時計が測る時代の幕開け 香取秀俊(2016年)
●単一サイクルX線パルスを発生するXFEL手法 田中隆次(2016年)

●レーザー分光による冷却原子の量子多体状態の研究 高橋義朗(2017年)
●光コムを利用する高精度なマイクロ波やミリ波発生の時代へ 石澤 淳(2017年)

●反陽子ヘリウム原子の冷却と反陽子-電子質量比 堀 正樹(2018年)
●光コムを用いた精密分光による分子衝突過程の核スピン依存性の発見 岩國加奈(2018年)

●超小型衛星による量子通信の実証実験 竹中秀樹(2019年)
●自由電子レーザーによる位相安定化パルス光の発生 羽島良一(2019年)


 編集委員の間、自分でもいくつかの原稿を書きました。2013年には、物理教育に関する原稿「グリーンフラッシュ」、そしてニュース「イッテルビウム光格子時計が次世代原子時計の候補に」を書きました。また2015年と2016年には、2つの翻訳原稿を仕上げました。さらに2018年には、特集光格子時計の新展開において、「巻頭言: 光方式の原子時計の優位性」及び「秒の再定義を目指して」の2つの原稿を執筆しました。それから、編集委員は半年1回編集後記を書くことになっており、私も7年間で14回書きました。前半は科学知識の普及も兼ねて身近なサイエンスの話題を取り上げていましたが、後半は大学の教育や科学研究予算のことを多く取り上げるようになりました。

 2014年に横浜国立大学に移ってきてからは、研究に加えて教育も大きなウェートを占めるようになったので、この仕事の大切さがよりわかるようになりました。研究室の学生の皆さんも毎月雑誌を読むのを楽しみにしていました。


 この7年間、編集委員会の他の先生方及び丸善出版の佐久間弘子さん、遠藤絵美さん、沼澤修平さん、稲垣朋子さん、福田教紀さん、安平進さん、堀内洋平さん、北上弘華さんにはたいへんお世話になりました。ありがとうございました!







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